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パニック障害に理解のある3千円カット美容院を探し求めて

数ヶ月前、長年行きつけの美容院だったお店が遠方へ移転してしまったためおれは新しい美容院を探していた。

おれにとって美容院探しは苦難の旅であり、今もその旅路に立っている。

パニック障害や解離性障害のあるおれにとって、美容院や歯医者、映画館など、身動き取れずに逃げ場のない半拘束状態におかれると過呼吸や幽体離脱が起きたり発狂しそうになる。発狂しそうなのを無理に抑えようとして余計パニックになる。

13歳くらいの時からそんな症状に悩まされきたおれにとって美容院は地獄以外の何物でもなかった。

そんなわけで、まず第一条件としては発作が起きづらそうなお店を探す必要があった。駅前のガチャガチャした店は全てNGで、駅から少し離れた所や郊外の穴場的なお店である必要があった。内装もアップルストアみたいな店は存在そのものがただのゴミでしかなく、木目調のフロアやインテリア、観葉植物などで飾られた落ち着いた雰囲気である必要があった。

アロマの香りも良いが、ダイソーやニトリのアロマコーナーにあるようなわざとらしい香りはかえって具合が悪くなるのでダメだった。

次なる条件としては、女性の美容師である必要があった。おれは男性でありながら男性恐怖症というか、男性的な男性恐怖症みたいなフェロモンを携えながら生きてきたし、それでいながらものすごく男性的で粗野な自分もいるのであったが、何はともあれおれは女性という生き物が好きで、毎日女性のことばっかり考えてるし、路上では常に女性を観察してる。女性に髪を触られると眠くなってくるという性質もある。男性に髪を触られるのは気持ち悪いし、そもそも、美容師の男性って胡散臭い感じの人が多いじゃないですか。それが嫌なんだよ。

おれは子供を産むことに懐疑的な人間なので、あわよくば同じように子供を持たない派の女性美容師さんがいれば良いとは思うが、そこは妥協しても良かった。しかし子供とか結婚の話とかは時代遅れで退屈なのでしたくない。

若い子は下手くそなのでそこそこ年の行った女性である必要がある。

もう一つの条件は、予約無し、または予約がすぐ取れる所である必要がある。これはおれが計画的な行動を取れず、待つという行為が出来ないADHDでもあることに起因している。いろいろ予定があったりすると落ち着かず、不安になるので予定はとにかく今すぐに片付けないと気がすまない。

金額面での条件は、以前は3ヶ月に一回程度しか行かなかったから4千円前後くらいでも良かったが、フーデリの仕事を始めてからは清潔感を醸し出す必要性を感じ、2ヶ月に一回の頻度で通うようになった。爪を切る頻度も増えた。フーデリをやってなかったとしても、おっさんの長髪はむさ苦しいのでどの道短めに保つようにはしていただろう。

そんなわけであるが、貧乏ソングライターであると同時に、八重人格の参謀長官または忍者として世界を影から支配するおれにとって、月額4千円のサブスクヘアーにするのは割りに合わなかった。

そこで2ヶ月ほど前、美容院を探していたがなかなか良い所が見つからなかったり、予約で一杯だったりした。めんどくさくなったので千円カット(厳密には千円ではない)のIWASAKIに行ってまあまあ綺麗な30代後半から40前半くらいの女性の方に切ってもらったがかなり雑というか大雑把な感じで切られちゃって、左右のもみあげの長さも違ってて萎えたが、そこそこ綺麗な女性の手腕によるシャンプーは気持ち良くて、思わずニヤけてしまった。

IWASAKIは店員も複数いて店も混んでて苦手だが、その日は微妙に酒も入ってて気分も良かったので、すぐ終わるから大丈夫だろうと思って店に入った。実際、良くも悪くもパニック発作を起こす暇もなく一瞬でテキトーに切られてしまった。

おれは生まれてこのかた、オシャレな流行ヘアスタイルにしたことなど一度もなく、パーマをかけたこともない。常に他者優先で自分の気持ちと意思を抑えて生きてきたから頼みづらかったっていうのもあるし、単にめんどくさかったっていうのもある。もちろんシンプルにちゃちゃっとカットしてもらってパニック状況からさっさと抜け出したかったというのが一番の理由だ。不細工な男性が髪型で補正しているのを見かけるが、おれはそこまで不細工でもなかったのでその必要性も感じなかったっていうのもあった。茶髪や金髪にしたことはあるが、パニックと経済的な理由で、店で染めたことは一度もない。

そんなおれだが髪自体はけっこう大事にしてて、女性みたいに髪を頻繁に触ったり手櫛を通したりしている。だからさすがにいくら安くても雑に扱われるのは萎え男。だけど髪型自体はシンプルでいいからささっとカットしてほしいのも事実。

そんなおれにとって、2千〜3千円くらいでそこそこ丁寧に、それでいながら短時間でカットしてもらうというのが理想的だという論結に達した。

そして先日、前回の反省から3千円でカットしてくれる美容院へ行ったが過呼吸を起こしそうになり頭が真っ白になって発狂しかけたのでこれはマズいと思って思い切って店員さんに説明し、何度か作業を止めさせて深呼吸や水分補給をさせてもらった。店に行く前にカフェインを摂取してしまったこと、薬を飲み忘れていたことなども原因だった。店員さんもあんまり愛想が良いとは言えない人だったのもしんどかった。

パニック障害などの理解があって、駅から離れてて、あわよくば室内ではなくカフェのように室外席があって、カット代は3千円で、子供を産まない主義者の女性の美容院、それこそが今の世に求められる理想的な美容師ズムなのでしょう。

御意

パニック発作の頻度が増えてきた


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© Hiro Kinohara
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