今朝起きたらワシはお爺さんになっとった。もうクリスマスに浮かれる年齢でもなく、ワシはいつも通り会議に出席し、プレゼンを済ませたワシは最後に靴下を履き替えたのはいつじゃったかのう、と嘆きながら投げキッスを部下たちに分け与え、腰痛をこらえながら帰路に着いておった。
いつもなら真っ直ぐに帰宅して靴下を履き替えていたのじゃが、今日のワシはどうもいつもとは様子が違う。ようわからんがとりあえず老けておる。そして自慢のスーツが真っ赤に染まっておられるではないか。
蚊に刺されたのかと思い、全身を掻きむしってみたものの、出血はますます酷くなる一方である。ワシは慌ててマツモトキヨ氏にメールを送り止血剤を手配してもらおうとしたのだが、マツモトは年甲斐もなくクリスマスなんぞに浮かれておる。
そんなキヨ氏を見ているうちに、今夜は清らかじゃのうと思えてきたワシは、ワシにはまだ希望がある、諦めなければ何だって出来るような気分になり、重い腰を持ち上げるが、やはり腰は痛む。
だが今日のワシには袋がある。アイテムをたくさん入れられる魔法の袋から止血剤を取り出したワシはまだ生きていることを実感し、この世界を真っ赤に染めようと神に誓う。サタンなのに神に祈ってもいいものか、それは今となってはもうよく分からないのであるが、とにもかくにも急がねばなるまい。
穴の開いた靴下を履いた子供たちに血塗られたバンドエイドを急いで届けねば!...だがバンドエイドで穴埋めするよりも新しい靴下を買ったほうが早いかもしれんなと考えているうちに耐え難い睡魔に襲われ、ついには永い眠りについてしまったのである。これからが人生の本番であることも知らずに———
第一章 完
あとがき
読んでくれてどうもありがとう。少し臭い私の靴下を来年もよろしくお願い致します。